研究会代表挨拶
はじめまして。
一般社団法人エンディングメッセージ普及協会の理事で信託研究会の代表を務める浅賀卓爾です。
私は長い間、金融の世界で資産運用や保全、ファイナンスに関わってきました。
また、FPとして数多くの事業承継や相続、そして生前贈与に携わってきた経験があります。
その中でいつも感じていたことは、銀行、証券、保険、さらに不動産などの業界は、相互に補間機能があるにも拘わらず常に縦割りで協力関係が築けずに、業界ごとの「自己責任」として処理されてきた実態です。
その後は、仕組債、不動産流動化によるREITや変額保険等さらにビットコイン等の代替通貨まで商品性が多様化してきましたが、結局それらすべては大手金融機関によるトップダウンによるものでした。
2007年夏、信託法の大改正が伝えられ、ようやく中小企業、個人に寄り添ったボトムアップの政策が歩き出しました。
それから10年、大手金融機関も不動産大手ゼネコン等も、社員研修でほとんど信託法は取り上げられてきませんでした。
失われた20年、デフレ経済の中での資産承継は、なかなか盛り上がりを見せませんでした。
ところが、平成21年度には13件だった遺言代用信託受注件数が、平成28年度にはなんと14万件を上回ってきました(信託協会統計)。
相続税の改正、中小企業オーナーの高齢化等様々な要因があると思われますが、注目すべき伸びです。
長い間FPという仕事で顧客に関わっていると、資産運用や節税というのは大手企業が顧客を獲得するツールに過ぎないことがよく分かります。
一方で相続対策というものは、税額やマネーゲームの問題ではないということに気づかされました。
相続対策で大切なのは、財産や事業を次世代に残したい親の気持ちと、引き継ぐ子供の気持ちを繋ぎ合わせることであることを痛切に感じました。
FP実務の中で感じることは、お客様からの教えを受け、生前から次世代とよく話合ってもらい、揉めることなしに信託を活用することができると、それ以降の人生の目標が定まります。
これにより、加齢による戸惑いや老後の不安といったものから解放されるのです。
民事信託によって、大きな節税効果や資産運用はあまり期待できません。
しかし、資産を守り揉めることなく承継していくことは、資産だけでなく、自らの意思や想いを承継していくことに繋がります。
私自身、親とこの信託契約を交わした時、初めて戦時中、戦後の混乱期、若い時の苦労等を聞き出すことができました。
親がどのような想いで現在の財産を築き上げたのか、少ないながらも子供達のことを考えた財産であり、気持ちが込められた「お金と不動産」質の高いものであることを知らされました。
この民事信託研究会は、財産の額に関わらず、気持ちのこもった価値の高い財産を承継するために、現在ある法律、税制、金融商品を絡ませながら、具体的実例を掲げながら、現実に実行援助できるように進めていきたいと願っております。
とくに、不動産、保険など日本人にとって多くの方々が関わっている財産的価値を目的にそって承継できるように研究し、共有していきたいと考えております。
■ 継続的な贈与を目的とした信託
■ 信託に属する債務の相続税における取扱い
■ 受益権での物納
■ 分離型信託の価値
■ 一般社団法人を活用した財産移転と承継
■ 保険料請求権と解約請求権の信託
■ 投資信託の信託財産管理
まだまだ、理論が先行して実例実績が乏しく、研究の余地は十分あると考えられます。
是非、今後の判例、改正法令等の情報を共有し、顧客のために努力していきましょう。